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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(オ)161号 判決 1951年2月27日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人代理人の上告理由は末尾添附別紙記載の通りである。

論旨においては行政事件訴訟特例法第五条第四項は「訴願の裁決を経た場合には、訴願の裁決のあつたことを知つた日か又は訴願の裁決の日から、これを起算する」とし訴願裁決を経た場合における原処分に対する出訴期間の伸長を規定している。而して上告人の再審議申請は訴願であり一一月九日付の通知は裁決であるから本件許可処分の取消を求める訴の出訴期間は同日から起算しなければならないという。しかしながら特例法第五条第四項にいう訴願は同法第二条にいう訴願と同意義であつて、法令の規定による行政庁に対する不服申立を指すのである。本件のような許可処分については訴願法はもちろんその他の法律勅令政令に訴願を許した規定はないのであるから、本件再審議申請は同法にいう訴願ではなく又通知も裁決ではない、従つて同条第四項によつて出訴期間を通知のときから起算すベきではない。更に論旨では訴願法第九条に「訴願ヲ提起スべカラザル(中略)モノナルトキハ之ヲ却下ス」としており、若し本件再審議の申請が訴願のできないものであるならば被上告人はこれを却下すベきであつたという。しかし行政処分は一般的には確定力なく行政庁は自己の処分を違法と認めたときは、場合によつてこれを取消すことができるのであるからたとえ訴願事項にあたらなくても不服申立があつた場合は、再び前処分の内容を審査することは少しも違法ではなくその結果を通知することも非難されるべき理由はない、このように再審議申請に対し行政庁が内容を再審査したからと言つて、そのために不服申立が訴願の性質を帯びるものでもなく、本件通知の日から出訴期間を起算する理由もない。要するに原判旨は正当で論旨は理由がない。

よつて関係裁判官全員一致で行政事件訴訟特例法第一条、民事訴訟法第四〇一条、第九五条、第八九条に従つて主文の如く判決する。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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